14人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
*
「美代知ってる? 体育館のトイレの、入り口に一番近い蛇口からカッパが出てくるんだって。仮入部の時、先輩が教えてくれた」
――カッパ? しかも蛇口から? なぜ。
幼馴染、原真衣が興奮気味に語った内容は、にわかには信じ難いものだった。学校の七不思議として、語り継がれているらしい。
そのトイレは校舎の南側、一階突き当たり、体育館の横にある。一度入ったことがあるが、薄暗くて不気味だし、きれいでもなかったので、緊急時以外は使わないようにしようと美代は心に決めていた。
そう思うのはみんな同じみたいで、利用する人はほとんどいないトイレなのだが、カッパを見たことがあるという証言はやたら多かった。なんとか先輩がカッパを出したことがあるらしい、なんとかちゃんは昼休みにカッパと話したらしい、などという信憑性のない噂話を、真衣は嬉しそうに聞かせてくれた。美代は「そうなんだ、すごいね」と相槌を打ちながらも、「そんなのはきっと、目立ちたがり屋さんがついた嘘だ」と思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!