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真衣の投稿の翌日、インフルエンサーのモモが、「蛇口からカッパ」というタイトルでショート動画を投稿した。遠近法を用いて、公園の水飲み場の蛇口からカッパのぬいぐるみが出ているように見せかけた動画だ。それが一日で三十万回再生され、似たような動画がたくさん撮られるようになった。女子高生の間でカッパが流行り出したのだ。
「モモちゃんが持ってるぬいぐるみ、かわいい。ほしい、どこで売ってるの?」
「ぬいぐるみ特定しました→【リンク】」
「蛇口からカッパ! シュールだけどかわいい」
やがてカッパグッズがたくさん生み出されるようになった。
キーホルダーやぬいぐるみをはじめとして、カッパスムージーなるものが開発されたり(中身はただのグリーンスムージーだ)、河童合羽というダジャレ商品まで売られたりしている。
街は緑色の商品であふれた。
美代は世の中の変化をぼんやりと眺めていた。水族館で水槽の中を泳ぐ魚たちを、ガラスの外から見ている時と同じ気持ちだった。今、モモの動画のおかげでカッパが流行っていて、動画は真衣の投稿を受けて作られたもので、その大元をたどれば、貼り紙を見つけた美代がカッパブームの火付け役と言えるのかもしれない。だけど美代には全く実感がなかった。
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