御前と貴様

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御前と貴様

Missテリー  「淡々と放たれる言葉に引き疲れ、小さな疑問の謎解きにまったりした心   地よさを感じていたのが懐かしくも、煮え切らない最後に期待と不満が入   り交じる複雑な気持ちを払拭するのにカレーを作って食べてみても、前と   は何故か味が違う違和感がなんとなく気だるくて、ああ、春だなぁ~って   思う事もないんです」 You  「貴様~。話が長い。簡潔にLossって言えy」 Missテリ  「あっ。僕は前から気になっていたんです」 You  「おいおい、ドラマかぶれから解放されたと思ったら、今度は何?」 Missテリー  「男性が、相手をののしる時に用いる貴様っておかしくないで?」 You  「軍歌の貴様と俺とは、貴様の顔なんか二度と見たくないってやつか」 Missテリー  「罵っているのに、(たっと)いに様までつけて。これ、相手のことをも    のすご~く尊敬してませんか」 You  「確かに」 Missテリー  「だから、調べてみたんです」 You  「それで、言いたいんだ。でも、聞きたくな~い、普段、使わないから」 Missテリー  「普段使わないのに備えない。それは防災用品を備えないのと同じです」 You  「いやいやいや。それとこれとは話が違うでしょ」 Missテリー  「でも、Youさん、さっき使っていますよ」 You  「あっ」 Missテリー  「気にせず使った言葉は記憶に残らないのです。だから、事実と真実が異な   るんです」 You  「はいはい」 Missテリー  「はいは一回で。thank you thank youは」 You  「Noになるんでしょ。で、調べた結果は」 Missテリー  「折角、疑問に思ったのに直ぐに回答を求めたがるのは勿体ないです」 You  「めんどくせ~。俺は、せっかちなの」 Missテリ  「Youさん、早漏なんですか。僕は嫌いじゃないですけど」 You  「うっせい!知らない癖に」 Missテリ  「僕にも知りたくないものがありました」 You  「それで」 Missテリー  「貴様って、丁寧な字面なのに何でと思い調べたら、室町時代にまでさかの   ぼりました」 You  「ずいぶん昔だな」 Missテリー  「はい。もともと武家の書簡で用いられていた「貴様」が庶民にも使われる   ようになると、敬意は暴落。江戸時代後期にはもう、目下の者に対して使   われるまでになってしまったそうです」 You  「強引な手法を取る国の企業の株価が暴落するみたいだな」 Missテリー  「株の事は分かりませんが、使う者によって品格がなくなるいい例です」 You  「だから、俺はブランド品を身に付けない」 Missテリー  「それは、買う余裕がないからです」 You  「分かっているなら、突っ込むな」 Missテリー  「突っ込むのはyouさんで僕じゃないです。相手も僕じゃないですけど」 You  「お前な、Lossしてから欲求不満が溜まっているんじゃないか」 Missテリー  「溜まるのはお金だけです。趣味や拘りがないので使わないですから」 You  「じゃ、俺に貸してよ~。月末、インスタントラーメンばかり。偶には牛丼、いや   昼定食を食後のコーヒー付で食べたいから」 Missテリー  「あっ、お前も、もともとは敬語の一種でした。漢字で書くと御前。静御前   などの御前と同じです」 You  「都合の悪い事は聞こえないのは相変わらずだな」 Missテリー  「一説には、遊女が客に対して使い始めたことで一般化が進んだそうです」 You  「遊女かぁ~。縁がないねぇ~」 Missテリー  「貴様」同様、江戸時代後期には二人称として定着したそうです」 You  「進化する日本語ってわけか」 Missテリー  「僕には、日本語の乱れだと思われます。使う者によっての変化するのは、   偏見や差別を生むと思われ、悲しくなります」 You  「日本人を嫌いになっても、日本語を嫌いにならないで下さ~い」 Missテリー  「それ、私が似ていると言われる人のグループを卒業した方の台詞をもじっ   たものですね」 You  「そう、こうして台詞も時代と共に変化していくんだ、うんうん」 Missテリー  「お腹が減ったからランチを食べに行きます」 You  「無視かよ~。でも、ランチ、奢って、無視しないで」 Missテリー  「貴様と俺とは、同期の桜でも、お前と言う間柄ではないです。では」 You  「置いてかないでぇ~。飢え死にする~」 Missテリー  「死なないでください。僕、寂しくなりますから」 You  「じゃ~、奢って」 Missテリー  「悲しくなるのは、御香典で出費することですから」 You  「チックショー」
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