迷子さんこちらへこっちの世界は甘いぞ

1/10
前へ
/10ページ
次へ
 昔のボクの世界には、夢と希望が詰まっていた。  けれども、今のこの世界にはなんの期待もなくなってしまったんだ。たとえそれが、過去に望んだ未来の実現だったとしても。 「ごめん。待った?」  僕が謝ると、友人は呆れた様子だったが、とくに怒る様子もなく、そっけなく返事をしたんだ。 「まあいつものことだからしょうがないよな。益子(ましこ)、君は生まれたときからだもんな。逆によくたどり着いてくれたよ。」 「井野(いの)くんはいいよね。初めての場所でも大丈夫なんでしょう? 僕は全然ダメだなあ。毎日来る場所でもこんなに時間かかるのに。」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加