ピーピング・トマサ

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 ひんやりしたステンレスの手摺を両手で握りしめ、間からにゅと鼻先を出す。6階建てマンションの屋上は、昼の間に吸い込んだ陽光をまだ蓄えていてほのかに温かい。佑香(ゆうか)は眼下に広がる茶色や紺青の瓦屋根に目をやり、小学生の頃図鑑で見た野生のエノキタケを思い出した。  足元に置いた紺色のスクールバッグから、ポロプリズム式の双眼鏡を取り出す。つい先日、なけなしの小遣いを貯めてやっと購入したものだ。佑香は一軒家3軒分ほど離れた、紺青の瓦屋根の家をじっと見つめた。いる。双眼鏡を覗き込んだ。かつん、と眼鏡のレンズが音を立てる。煩わしくなって、佑香は眼鏡の蔓をつまみ額へと押し上げた。  2階の部屋の窓にカーテンはかかっていない。双眼鏡で拡大すれば、中の様子がくっきりと見てとれた。この部屋の主である希子(きこ)は、窓際のベッドに仰向けで寝転がっていた。顔の前にスマートフォンを掲げている。セーラー服は脱いだらしく、白いTシャツから細い足が伸びていた。ピンクの水玉柄のパンツが丸見えだ。ふっくらとした恥丘に目が留まり、佑香の心臓がどくりと音を立てる。希子って自分の部屋ではTシャツ一枚で過ごすんだ。
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