2人が本棚に入れています
本棚に追加
「……変な手紙が靴箱に入ってて。私、覗かれているみたいで……。」
「うん……。」
「下着の色とか、知られてるみたいなの……。」
それで。誰が変な手紙を入れていると思う。
奇妙な感覚だった。佑香は窮地に立たされているはずだった。覗きが露見すれば、佑香の信頼は地に落ちる。誰からも相手にされなくなるだろう。だが同時に、希子が抱いている不安を、恐怖を与えているのは自分だと強く自覚した。この世のすべてをコントロールできるのではないかとさえ思った。体の奥がきゅっと収縮して、この上なく気持ちがいい。ああ、ドキドキする。
「……覗いているのは絵里じゃないか、って思ってて……。」
「……え?」
耳を疑った。
「どこから覗いているかはわからないんだけど、絵里、私のことを変な目で見ていることがあるような気がするんだ――」
無性に腹が立つ。もう希子の言葉は聞こえなかった。
私の心臓を脅かしてくれないのなら、何の意味もない。
授業開始のチャイムが鳴る。
「――何回も絵のモデルやってとか言うしね――っあ、佑香!?」
こそこそと話し続ける希子を置きざりにして、佑香は廊下を走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!