ピーピング・トマサ

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「……変な手紙が靴箱に入ってて。私、覗かれているみたいで……。」 「うん……。」 「下着の色とか、知られてるみたいなの……。」  それで。誰が変な手紙を入れていると思う。  奇妙な感覚だった。佑香は窮地に立たされているはずだった。覗きが露見すれば、佑香の信頼は地に落ちる。誰からも相手にされなくなるだろう。だが同時に、希子が抱いている不安を、恐怖を与えているのは自分だと強く自覚した。この世のすべてをコントロールできるのではないかとさえ思った。体の奥がきゅっと収縮して、この上なく気持ちがいい。ああ、ドキドキする。 「……覗いているのは絵里じゃないか、って思ってて……。」 「……え?」  耳を疑った。 「どこから覗いているかはわからないんだけど、絵里、私のことを変な目で見ていることがあるような気がするんだ――」  無性に腹が立つ。もう希子の言葉は聞こえなかった。  私の心臓を脅かしてくれないのなら、何の意味もない。  授業開始のチャイムが鳴る。 「――何回も絵のモデルやってとか言うしね――っあ、佑香!?」  こそこそと話し続ける希子を置きざりにして、佑香は廊下を走り出した。
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