ピーピング・トマサ

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 ドキドキと鼓動が加速する。堪らず佑香は部屋の様子を仔細に観察した。希子が寝転がっているベッドは、オレンジ色のギンガムチェックの布団カバーで覆われている。ベッド脇の小机には、赤ん坊大のふわふわしたうさぎのぬいぐるみと、デジタル式の目覚まし時計が鎮座している。目覚まし時計は16時10分を表示していた。部屋のドア近くには籐の箪笥が置いてあった気がするが、ここからだと角度が悪く見えない。  希子はごろりと横を向いて大あくびをした。カバみたいだ。Tシャツを捲って右わき腹を掻いている。佑香は高鳴る心臓の音を誇らしくさえ思った。  人は人と接するとき、仮面を被らずにはいられない。しかし、どうだろう。今自分は、同級生のありのままの姿を見つめている。他の生徒は、希子の下着の色まで把握していないだろう。佑香は再び、神になったような気がした。
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