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中学1年生になって、スマートフォンを手にした佑香は隠し撮りを始めた。覗いていない時間も、動画を観てドキドキしたかった。
それが間違いだった。中学1年生の2月、教室で学年末テストの勉強会をしているときだ。スマートフォンを触っていた佑香は、誤って一瞬、芹奈の動画を表示させてしまったのだ。
「え、ちょっと待って、今の何?」
「何でもない。何でもないよ。」
慌てて言い募ったがもう遅い。
「今のあたしじゃない?ねえ?」
「ち、違うよ……。」
芹奈はばっと佑香の手からスマートフォンを奪う。
「は?何これ?あたしのこと撮ってたの?」
「……。」
佑香は何も言えずに硬直した。手足がぶるぶると振動する。心臓がどこどこと暴れまわる。背中を冷や汗がつぅと伝う。
「気持ち悪い。一生口ききたくない。」
芹奈はゴミを見るように佑香を一瞥し、教科書と筆箱を鞄にしまった。そして乱暴にドアを開け、去っていった。
私のことを知らないのは、芹奈、あなただよ。
震える佑香は、妙な快感を湛えて、ただひとり教室で座っていた。
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