雨音

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 ポツポツ、シトシト、ザアザア。  「今日もまた雨なのね。」  そうポツリと呟いて、私は用意された紅茶をゆっくりと飲む。  カーテンは閉め切っているが、雨は音でわかってしまう。  「最近、毎日のように振るわね。前まではこんなに頻繁ではなかったのに。」  こう毎日雨に振られては、外出もままならない。  私は濡れるのが大嫌いなので、ここ最近はずっと部屋に籠もって読書や刺繍をしている。  雨のせいで紅茶の質も落ちている気がする。  この雨のせいで家の者たちは、皆忙しそうに動き回っている。  しばらく父や母とまともに顔すら合わせていない。  私の専属メイドも一昨日から、なにやら荷造りしたり部屋の大掃除をしたりで、バタバタと動いている。  もしかしたら、晴れが続いているという北の方へ旅行にでも行けと言われるのだろうか。  そんなことを考えていたら、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。  「お嬢様、大型の台風が接近しています。速やかに裏口から出て馬車にお乗り下さい。」  そら言わんこっちゃない。  こんなに天気が荒れているんだもの、収まるまで北の地でゆっくりしましょう。    馬車は外から見たら誰が乗るかわからないよう、裏口にピッタリくっつけて停めてあった。  荷物を積み終えたメイド達が、何故か泣きながら私を見送っている。  そんなに私に会えなくなるのが辛いのだろうか。  馬車の窓にも外が見えないようにカーテンが引かれている。  広場の横を通り郊外に向かう道の途中、すぐ近くに雷が落ちたような凄まじい音がしたので、私は思わず窓の外を見た。  そこには、広場を埋め尽くすほどの沢山の人が集まっていた。  そこで私は音の正体に気づいた。  「ここ最近の雨だと思っていた音は、人々の叫び声だったのね。」  よくよく広場の中心を見ると、一段高くなって見やすい構造になっている舞台のような場所があった。  もしかして、面白い舞台でも始まるのだろうかと気になったが、馬車はスピードを上げて一気に郊外へと進んでいった。  「さっきの舞台の話は、今度帰ってきたら屋敷の皆に聞いてみましょう。」  こうして私は北の地へと旅立った。  私は生涯を終えるまで、生まれ育った地に帰ることはなかった。  父母とも二度と再会することはなかった。  唯一私に付いてきてくれた乳母が事の経緯を教えてくれた。  自分達が見たいものしか見ず、聞きたいものしか聞かなかった貴族や王族の末路。  気づいたときには全てが遅い。    私は雨が降るたびに一生怯えて暮らした。  
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