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第一章 陽洋(ようよう)へようこそ
県境の長い橋を渡っていると、遠くに陽炎のような建物が見えてきた。
それは、霞が廃棄ガスで、建物は実在している。だが、霞に覆われた都会は、近くにあっても、いつも遠い。
そして、ここから見えるということは、建物は低層の民家の屋根をはるかに越した高さで、要するに見えているのはビジネス街だ。
早朝のせいで、さほど満員になっていない通電車の窓からでも、高層建築を見ると人混みを思い出し、溜息が出る。
だが俺が向かっている先は、そのビジネス街の隅で、ほぼ通り抜けた先にある。
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