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山の上駅を降りても、そこには山はなく、ましてや山の上でもない。駅前のロータリーを抜けると。左にはアーケード街があり、祭山商店街とある。そこにも山の文字が使われているが、山とは無関係であった。そして、アーケードは参道も兼ねていて、山の峰神社へと続いている。そして、これも山というよりは、丘に近い。
この土地は、山に縁があるのではなく、水害が多く発生した土地であった。だから、水害を封じる為に、昔の人が山という言葉を多用したと記録に残っている。
俺は電車を降りると、駅前のロータリーを抜け、左手の商店街を無視し、真っ直ぐ進んだ。すると、雑居ビルが連立してくるが、それも無視し、オフィス街へと抜ける。しかし、オフィス街も早足で過ぎ去ると、今度は正面に、山と野原自然公園が見えてくる。
そして、この公園の手間に、俺の職場がある。
洋麺軒 陽洋。名前は中華な響きもあるが、お洒落な店で、木造の雰囲気が山小屋にも見えた。そして、常連客からはハイジの家とも呼ばれていた。
そして俺、水瀬 佳樹(みなせ よしき)は、この陽洋でコックをしている。
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