3人が本棚に入れています
本棚に追加
俺たちが構成する氷の塊は日々痩せていった。手を離してしまう最期の時が訪れるのも時間の問題だろう。
せめてもの救いは、俺たちの上で暮らしていた白熊たちが、近くの大きな氷の塊に泳いで引っ越していった姿を見れたことだ。
「長い間そばに居てくれてありがとう、いよいよ離れる時が来たようだ」
「うん、長い間手をつないでいてくれてありがとう」
「ああ、だんだんと手の力が無くなっていくよ……」
「さよなら……」
俺たちは水になり離れ離れになって、大海原に放り出された。
地球温暖化は何万年も手をつないできた俺たちを引き離し、白熊たちの生活圏も脅かしている。
でも俺は諦めない。いつかまた手をつなげる日がくることを、俺たちの上で安心して白熊たちが暮らす日が戻ってくることを。
ーーーーーおしまいーーーーー
最初のコメントを投稿しよう!