その手を離すな

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 俺たちが構成する氷の塊は日々痩せていった。手を離してしまう最期の時が訪れるのも時間の問題だろう。  せめてもの救いは、俺たちの上で暮らしていた白熊たちが、近くの大きな氷の塊に泳いで引っ越していった姿を見れたことだ。 「長い間そばに居てくれてありがとう、いよいよ離れる時が来たようだ」 「うん、長い間手をつないでいてくれてありがとう」 「ああ、だんだんと手の力が無くなっていくよ……」 「さよなら……」  俺たちは水になり離れ離れになって、大海原に放り出された。  地球温暖化は何万年も手をつないできた俺たちを引き離し、白熊たちの生活圏も脅かしている。  でも俺は諦めない。いつかまた手をつなげる日がくることを、俺たちの上で安心して白熊たちが暮らす日が戻ってくることを。  ーーーーーおしまいーーーーー
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