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 そんなことがあり、どうにも気まずい気分のまま出勤した後の昼休み。  端末を確認すると、柴本氏からメッセージが入っていた。 《お疲れ様です。もし良ければ、今日、夕飯を一緒に食べませんか?》  緊張しながら文字を打ったのが容易に想像出来る、短いながらもかしこまった、緊張したような言い回し。  絵文字の混じったフランクな口調もとい文体とスタンプが乱れ飛ぶ以前の記録とを見比べれば、アカウントを乗っ取られたかのようにも見えた。  もしかしたらそれは部分的には合っている――すぐ側で誰かが彼に細かくアドバイスをした結果なのかもしれない。  便利屋という仕事柄か、はたまた人柄そのものに由来するのかは分からないが、彼の周りには老若男女を問わずさまざまな知り合いがいるようだ。  そのうちの誰かが彼の横で口うるさく助言している様子が思い浮かんで、笑いが漏れてしまう。  楽しみにしています。帰る前にまた連絡します。  そんな感じの返信を送ると、間をおかずにいつもの、変なキャラクターが狂喜乱舞するアニメーションのスタンプが返ってきた。  **********  その帰り道。  駅でモノレールを待つ間、携帯端末の地図アプリをなんとなく開いて眺めていると、あることに気がついた。  銭湯や公衆浴場の類が、街のいたるところにあるのだ。  昨晩、湯舟の中で柴本氏が口にした言葉を思い返す――裸の付き合い。  他にも思いつくキーワードを片っ端から検索エンジンに打ち込み、表示されるサイトの文面に目を走らせる。    調べるのに熱中するうち、乗るつもりだった便を逃してしまった。  けれども、それだけの――いや、それ以上の価値はあった。
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