始まり

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始まり

それはいつもの様に、古本屋で本を読んで店番をしていた時の話だ。 インターネット販売は一応軌道に乗ったが、俺は元よりパソコン嫌い、注文を見るのは夜のみ しかも、日によって、見なかったりもする。 何せ週一、悪い時は月一冊の注文があれば良い方だからだ。 目ぼしい有名作品は売れてしまった。 送料が相手持ちで、本の値段と合わせると地方の人間ならまだしも、東京に住む人なら直接、本屋街で探した方が安く手に出来るからだ。 当たり前と言えば当たり前。 つまりこの古本屋は、開店休業状態。 更に、インターネットの普及で、エロ本も大して売れない。まあ、そんなものだろう。 よく今まで、営業が続けられたものだと、 俺は、ため息混じりで、本を読んでいた。 金は無い、かと言って食えない訳でもない。 陽子ちゃんに奢ってもらったり、大泉がどうでもよい本を買ってくれたりと、何とかかんとか、食いつないでいた。 今日も今日とて、俺は客が殆んどいない店で、のんびりしていた訳だ。 金に無頓着と言うより、食に無頓着なのかも知れない。週3か週4で大泉が、里屋に行こうと誘ってくれるので、金はいらなかった。 当然、奴の奢り。 その金が何処から出ているのかは、考えない事にしていた。親父か?とも思えるが。 まあ、裕福とは言え、船越の稼ぎと親父の年金?では、俺の食い扶持まで、そうそう金も回らないだろう。 姉さんの所も、子供が生まれてお金が要る時なのだから、尚更だ。
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