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さて、今日も来るかな、お客と思っていると。黒いスーツを着た男が1人、入ってきた。
たまにいる、警察なのか公安なのか、俺の監視の為、客をよそおう男が。
しばらくいて、どうでもよい本を買って行く。本当は売れない本を、買っていって欲しいのだが。果たして本当の客ならと、笑顔で売るのだが。大抵、相手は睨み付けて一言も喋らず帰って行く、ため息ばかりだ。
俺はジーッと男を見ていた。すると、もう1人入ってきた。
えっ?と思っていると。
俺の対面の本棚の両通路に各々入った。
中央に本棚、そして両壁に本棚、と言うレイアウトだ。
逃げ道を塞いだ?と思っていると、開け放たれた正面の入り口の、平積みの台の前に、黒いセダン車が停まった。
そして人が1人降りてきて、2人の男が入り口を背にして立った。
誰だ?嫌な予感。
しかし逮捕では無いなと思えた。
何故なら、狭い通路を通り、男を脇に退かせて入ってきたのは、背の高い女の人だったからだ。
俺の顔を厳しい目付きで見ていたが、ニヤッと笑った。
知っている人とは分かったが、誰だかしばらく判らなかった。
「お久しぶりね、忘れたかしら」
彼女の声を聞いて俺は一瞬でフラッシュバックした。
嫌な記憶、あの事件の時の、この人は……。
「水谷雄太さん、あなたを連れに来ました」
とその人は言った。
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