第一章 はじめまして!

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「うわあ!」 「きゃあっ!」 一花は思わず悲鳴を上げて飛び上がってしまったのだが、すぐに自分以外の声も確かに聞こえたことに気づいた。 「あっ、あっ……ごめんなさい」 振り返ると一人の背の高い女子、おそらく生徒であろう人物が一花に向かってぺこりと頭を下げる。 『おお、デカい』 一花は心中で呟きながら身体を向けて、さっと背後にいた人物の上から下まで眺めてみた。 セーラーカラーのついた上衣にプリーツを重ねたスカート。どう見ても学生服に思える。 「いや~ビックリしたっスね~! あの鐘の音、ここで聞いたらあんな凄い音量なんスね」 「う、うん、急だったからびっくりしちゃった」 少女はぎこちなく微笑みながら言った。 『うわー、なんかお人形みたいな人っスね』 上背は一花よりも頭一つくらい高い。日本人女性としてはかなりの高身長だろう。にも拘わらず全身から謙虚というか慎ましやかな気配が漂っており、どこか弱々しい可憐な印象の少女である。 「ここの生徒っさんっスか?」 制服を着ているし一花はなんとなく聞いたのだが、 「ううん……私、転校生。明日の始業式からここの生徒で……」 少女は目を伏せて答える。 「ふ、老けて見えるよね? 背高いし」  「あ、い、いや、服がその」 「ああ、これ? 前の中学のなの。学校だし、なんとなく。まだ登校前なのに、ここの制服着るのも変かな、って……」 あ~、と一花は間が抜けた声を出した。 「いや~、きちんとしてるんスね~! 私も転入生なんスけど、私服で来ちゃって」 あははと笑いながら、一花は上着を指で摘まんで見せる。 「あたし、朱千一花っていうんス! 実家はちょっと離れたとこなんスけど、色々あってここに入学することになって……。初めての土地でちょっと緊張してて、ええ~」 一花が語尾を泳がせると、少女はすぐさま対面の相手の意図を理解し、 「あ、わ、私っ、令印(れいいん)(あゆむ)」 と、かぶせ気味に名乗った。 「歩ちゃん! 歩ちゃんみたいな人と知り合いになれてよかったっス!」 「あの、私も!」 歩はまたも即座に応じる。 深呼吸して、 「私もそうなの。実家はこことは全然違うところなんだけど……色々あってこの学校に来ることになって……」 ここまで言って、グッと唾を飲み込んだ。 「あの、私も……朱千……さん、みたいな人と知り合えてよかった。少し心細かったから……」 うわ~、ホントかわいい人っスね~っ、と思わず声に出しそうになり一花は慌てて口を噤んだ。
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