高橋の場合

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「すまない。今日は行けない。」 トオルはひどく憂鬱な声で、友人からの誘いを断った。 そしてすぐさま、電話の中の明るい声を、彼は滑稽だと笑う。   この70年、時が止まってしまった世の中で、進化を遂げようとする少数の人間は、今の世の中に似合わない存在となっていた。 トオルの家系もそのひとつ。 彼の家のパーソナルコンピュータを使った技術は、停滞を続けた国家を揺るがすほどの力を持っており、トオルは暇があるごとに国家の機密情報を非合法的に見ていた。
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