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碧き瞳が持つ力
俺の目の前で少年が泣いている。
とても辛そうに、苦しそうに、必死に声が漏れないように歯を食いしばりながら、碧い瞳から幾筋もの涙を零し、顎を伝っては床に落ちていく。
その涙が、何故だかとても綺麗に見えた。
そのまま床に落ちてしまうのが惜しく感じるほど、その雫は光り輝いていた。
ふと、その少年の背後にある窓から、外で雨が降っているのが見えた。
晴れ渡った空に日が照る中、細やかな雨粒が降り注いでいる。
狐の嫁入りだ。
太陽に照らされた雨粒たちはキラキラと輝き、まるで宝石が降っているかのようだった。
不思議と、少年の涙とリンクしているように見えた。
ポツポツと聞こえる音が、雨音なのか、少年の零す雫の音なのか分からなくなるほど、その涙が雨を降らしているかのように感じた。
霊力を宿す少年の碧き瞳。
悪霊を呼び寄せ、周囲に害を齎してしまうその瞳は、少年を孤独にした。
親に捨てられ、保護団体をたらい回しにされ、力の制御も出来ず、教えてくれる人もおらず、ただ拒絶され続けた少年は、自分の感情を殺すしか無かった。
歯を食いしばり、瞳を伏せ、口を閉ざして孤独に耐えていた。
俺に出会うまでは。
少年を一目見て俺は気づいた。
並外れた霊力を持ち、その霊力に引き寄せられているようにして悪霊たちが集まってきていることに。
俺が少年に伝えたことはたった1つ。
「俺と一緒に来い。」
短い一言に少年は伏せていた瞳を上げ、俺を真っ直ぐ見つめた。
人生に絶望し、光を無くしていた少年の瞳に光が戻った。
次の瞬間、堪えきれなくなった涙を零した。
声を殺して泣く姿は、少年の生き様を表しているかのようだった。
涙を零しながら、少年は何度も頷いた。
霊力を操る俺と、霊力に操られる少年。
2人の物語はここから始まる。
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