渡された傘

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「お粥がまだあるから、お腹すいたら食べてね!」 真潤はこう言い残して、僕の部屋を出て自分のアパートに帰った。 僕はまだ少し体がだるい感じがしたので布団に入って寝て、お昼になったらお腹がすいたので、真潤が作ったお粥を温め直していただいた。 夕方になると熱はすっかり下がって、僕は元気を取り戻した。 僕は夕方真潤に、 「熱はすっかり下がって元気になったよ!  本当にありがとう!」 とお礼のメールを送った。 僕は翌日からいつものように講義に出席した。 僕の大学生活は充実していたと思う。 大学2年生までに多くの単位を取得して、3年生になるとゼミに入った。 僕が希望したゼミには真潤も入っていて、一緒に教授の指導を受けていた。 この頃から大学卒業後の就職のことを考え始めたけれど、僕は真潤は少し浮かない表情をしていると感じるようになった。 ある日僕は、講義が終わった後にゼミに顔を出して、同じゼミの学生と少し話をしてからアパートに帰ることにしたけれど、そこに真潤もいたのでお茶に誘ってみた。 真潤は僕の誘いを受け入れてくれて、一緒に大学近くのコーヒーショップに行った。 お互いに飲み物を注文して席に着くと、僕は率直に真潤に質問した。 「最近、元気ないみたいだけれど、どうしたの?」 すると真潤は少しためらったようだけれど、 「実は男の子の姿でいることが辛くなってきたんだよ!」 と正直に話してくれた。 真潤はLGBTのことを教えてくれて真潤自身はトランスジェンダーで、心は女、体は男で医師から『性同一性障害』であると診断されていることも教えてくれた。 真潤の場合は女性ホルモンを摂取していないため、ニューハーフではなくおかまということになるようだ。 最近はおかまという呼び方は失礼になるようで、男の娘(おとこのむすめ)という字を書いて男の娘(おとこのこ)と言うことも教えてくれた。
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