渡された傘

「魅李君には、理解できないよね！」

真潤の言葉に僕は、

「うん、正直理解できないけれど、ただ今の僕は、真潤のために何かできないかと考えているよ！」

と自分の思いを正直に伝えた。

真潤の悩みは深いと僕は感じたけれど、でも何をしたらいいのかは何もわからなかった。

それでも真潤は僕の気持ちを察してくれたようで、僕が真潤の悩みを聞くだけでも気持ちが楽になると話してくれた。

大学４年生になると就職活動が本格化して、同じ学年の友達は皆就職活動で忙しい日々を送っているようだった。

僕もいくつかの会社の面接などを受けたりして就職活動で忙しい日々を送っていて、真潤と会う時間も少なくなっていた。

ゴールデンウィークが終わった５月のある日、ゼミの教授から緊急の電話連絡が入った。

連絡の内容は、真潤が亡くなったという話だった。

僕は急いでゼミに行くとゼミの学生が集まっていた。

教授の話では警察は真潤は自殺した可能性が高いと考えているようで、警察が引き続き詳しく捜査しているという話だった。

真潤が亡くなったのは昨日で、明日が通夜で明後日が葬儀の予定で、真潤の実家がある仙台で行われるという話だった。

僕は翌日仙台に行って通夜に参列し、仙台市内のビジネスホテルに１泊してさらに翌日の葬儀にも参列した。

僕は東京のアパートに帰ってから真潤のことを思い起こしてみたけれど、最近真潤は元気がなくて悩んでいるのは知っていたけれど、その悩みの重さがこのような事態を招くとは考えていなかった。

僕は真潤の自殺の原因が自分が真潤の告白を受け入れなかったからではないだろうか、もし僕が真潤の告白を受け入れていれば真潤が自殺することはなかったのではないだろうかと悩むようになった。

このような悩みを抱えるようになった僕は、気持ちが落ち込んで就職活動や卒業論文の執筆に集中することができなくなっていた。