第一章 鷹山高校

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受験の際にも感じていたことだが、今現在目の前で行われている授業は、俺にはあまりにも簡単すぎる内容だった。 進学校だった朝比奈では、中3で既に高校の勉強にさしかかっていた。 だがそれを抜きにしても、中学の振り返りのような授業を目の前では行っており、聞くに堪えないあまりにも退屈な授業だった。 周りの生徒はこの授業をどのように感じているのか分からないが、俺より前にいる生徒は真面目に黒板を写している者が大半であり、2名ほど机に突っ伏して寝ている状態だった。 先生はその寝ている生徒を注意する素振りはなく、眼中にないかのように授業を進めている。 俺より後ろを振り返って確認するほどのことでもないが、きっと同じようにチラホラ寝ている生徒がいるのだろうと察する。 ここではこの状態が当たり前なのかもしれない。 俺はとりあえず黒板を写しつつも、中2の時には習得したその内容をきちんと聞く気にもなれず、暇を持て余して手元は勝手にペン回しを始めてしまう。 「亀器用だな。どうやってんのそれ?」 俺の隣から声が聞こえ、そちらに目を向ければ京介がいつの間にかこちらを見ていたらしく、俺の手元を見ながら真似をしようとペンを回していた。 「どうって、無意識だからな。」 「俺割かし手先は器用なタイプなんだけど、どうにもペン回しは苦手なんだよ。」 「別にそんな習得するものでもないでしょ。」 「だって何かかっこいいじゃん。」 「私語は慎みなさい。」 寝ているものは無視だが、私語はどうやら厳禁らしい。 俺らは適当に返事を返しつつ、京介は懲りずに小声で話しかけてくる。 「なぁ、どうやったら回んの?」 「また怒られるよ?」 「だから小声にしてんじゃん。こう?」 京介は何となくで俺の真似をしながら回そうとし、その度にペンを机に落として音を立てている。 まだ然程(さほど)に親密な関係を築いていない教室は静かであり、京介のカシャンというペンが落ちる音がやけに響いて感じる。 当の本人はそれを気にするそぶりはなく、先生も何故か(とが)めなかった。 先生の声を妨害するほどでもなければ気にしないようだ。 俺は無意識に行っているその行為を何とか言語化しながら京介に説明し、適当にそれを眺めながらたまに黒板を写して授業を終えた。 その間一度も京介はノートを取らなかったのだが大丈夫なのだろうか。 もしかすると、これは後に俺に見せてくれと言い始めそうだ。 黒板を写すことなど造作もないことだから、別に写して見せてあげても構わないが。 その後の時間も退屈な授業は続き、昼休憩になると皆が思い思いの行動をしバラけていく。
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