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「お、早いねぇ。ほら亀、野次馬しに行くぞ。」
「え?何の?」
京介が突然立ち上がり、俺はパンを口元に添えたまま訳が分からず瞬く。
「喧嘩だよ。詳細は分かんねぇけど、もしかしたら隣はもうトップ争い始めたんじゃね?」
「え?トップ争い?何のこと?」
「行きゃ分かっから。パン食いながらでいいから行くぞ。」
俺は訳も分からず当然のようにその騒動を見に立ち上がった二人に続いて立ち上がり、既に人だかりが出来始めている廊下から教室内を覗き見る。
そこには胸倉を掴みあった2人の生徒がおり、一人が素早く拳を振り上げた。
俺はその光景に自分が殴られるような錯覚に囚われ、思わず肩を竦めて目を瞑る。
次の瞬間には先ほどと同じように机にぶつかりなぎ倒されていく派手な音がした。
そっと目を開けば殴られたほうは痛そうに蹲っており、どうやら立ち上がれそうにはなさそうだった。
「あぁやっぱなぁ。近藤が勝つと思ったぜ。にしても始まり早かったな。1週間ぐらい様子見するかと思ってたんだけどな。」
「まぁあの2人は中学の時の因縁があるからね。同じクラスになったなら早いのも当然じゃない?」
「それもそっか。ま、近藤なんて俺の相手じゃねぇからいいんだけど。」
「今年の鷹山は外れ年だったしね。まさかあの3人が全員落ちるなんて思ってなかったし。」
「内申クソだからな。流石に学校も手に負えねぇって思ったんじゃね?」
2人は訳の分からない話をしながら、教室内で2人の行方を見守っていたであろう人たちがなぎ倒された机やら何やらを片付けていくのを尻目に自分の教室内に戻っていく。
俺はそれを慌てて追いかけ自分の教室へと戻る。
「さっきの何?何があったの?誰?」
俺は自分の席に戻れば、先ほどの衝撃で聞きそびれたことを矢継ぎ早に問いかけた。
「亀、まさかここの慣わし知らずに入ったとかねぇよな?」
「慣わし?何のこと?」
「え?マジ?お前何も知らずにここに来たの?」
2人は驚いたような表情をしているが、その顔をしたいのは俺のほうである。
「うーわマジか。え、喧嘩見んのも初めて?」
「見るのは別に初めてじゃないけど、あんなに重そうな拳は初めてかも。」
実際には俺は当事者であり、傍観者になったのは初めてだがあんな激しい喧嘩ではなかったためあまり深くは言わないほうがいいだろうと判断する。
喧嘩ができると思われても危なそうだ。
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