第一章 鷹山高校

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「おい亀、この後暇?」 そう声をかけてきたのは今日唯一言葉を交わした京介だった。 どうやら俺のあだ名は亀になったらしい。 「予定はないけど?」 「じゃあ遊びに行こうぜ。この辺知らないなら俺が案内してやるよ。」 「ありがとう。だけど、俺自転車家に置いて来たから歩きだよ?」 「は?マジ?なら先にチャリ取りに行こうぜ。俺がニケってやるから。近くなんだろ?」 「うん。直ぐそこ。」 俺は時間を有効に使いたくて学校から直ぐ近くの家を借りていた。 新築ではないが、それなりに新しく、一人暮らしをするには十分すぎるぐらいの家である。 家が直ぐそこのため、母親には事前に自分で帰るから終わったら帰ればいいと伝えてあるので、俺は誘われるまま京介と共に駐輪場へと向かう。 「亀の親は来てんの?」 「多分?見かけてないけど。もう帰ってると思うよ。」 「会ってねぇの?そんなに仲悪いのか?」 「そういうわけじゃないよ。ただ家が近いから送ってもらうこともないし、先に帰っていいって言ってあったから。」 「それでもいるもんだろ。淡白な親だな。」 「そうかもね。京介のとこは?」 「俺は亀と遊びに行くからってさっき言ったから帰ったよ。俺のとこ兄弟多いからさ、留守番させてるからさっさと帰りてぇって言ってたし。」 「そうなんだ。何人兄弟なの?」 「5人兄弟。ちなみに俺は次男な。一番下はまだ幼稚園だしな。」 「賑やかそうだね。楽しそう。俺一人っ子だからさ。」 「賑やかじゃおさまんねぇよ。全員男だからうるせぇのなんのって。喧嘩が絶えねぇし。」 お互いの自己紹介のような感覚で他愛もない話をしながら駐輪場へ向かい、俺は後ろに乗せてもらって自宅へと案内する。 自転車で来れば5分も掛からない距離だ。 「マジでちっか。つぅかでっか。お前こんないい家住んでんの?一人で?金持ち?」 「まぁ貧乏ではないけど。荷物置いてくるからちょっと待っててくれる?」 「あぁ構わねぇよ。」 京介は自転車に跨ったまま3階建てのアパートを上から下までまじまじと眺めている。 確かに、高校生が一人暮らしをするには立派過ぎる家だ。 間取りも2LDKだし、一部屋は完全に空間を持て余している状態だ。 こんなに広くなくていいと言ったのだが、防犯にうるさい親はセキュリティーを重視して選んだため、俺には不釣合いな家に住む羽目になっている。
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