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必要なものだけを出かける用のかばんへ入れ替え、自転車を持って待っている京介と合流する。
「お待たせ。」
「おう。とりあえず、ゲーセンにでも行くか。こっから一番近いし。」
どこにあるゲーセンかも分からないが、俺は走り出した京介の後をただ追いかけた。
「お前の親って何やってんの?」
「何って、仕事のこと?」
「そ。あんな家を高校生の息子一人の為に用意するぐらいだから、何か立派な仕事してんじゃねぇの?」
「立派かどうかは知らないけど、まぁちょっとお偉いさんかな。」
「お偉いって何の?」
「んー、警備系の?」
「警備って、またざっくりだな。あれか、アル○ックとかああいう大手の?」
「そんな感じかな。俺も詳しくなくて。」
「そういう話もしないのかよ。会話することねぇの?」
「まぁほとんど。ほぼすれ違いだからさ。」
「お前んちは色々訳ありっぽいな。」
「そうでもないよ。ただ仲があんまり良くないだけだよ。」
俺はそうはぐらかしながら京介の案内でゲーセンへと向かった。
ここでは、俺の親については話さないでおこうと来る前から決めていた。
俺の父親は警察であり、その警察の中でもトップである警視総監だった。
前の学校では周知の事実であり、俺を弄る格好のネタとなっていた。
警察というものは無条件に印象が真っ二つに分かれる。
正義感の溢れたかっこいい職業。
はたまた、細かいことで得点稼ぎをする税金の無駄遣い。
世の中は前者よりも後者のほうが印象が強いのが現実である。
それによって俺は特定の人物からは忌み嫌われ、陰湿ないじめもよくあった。
いじめに屈したことはないが、父親を嫌っている俺からすればそれを理由に標的にされるのは心底不快だった。
それを甘んじて受けるほど俺は心が広いわけでもなく、いじめに屈したことは無いし、拳で仕返ししたこともある。
ただ、陰湿ないじめを働く奴らなだけあって、アイツらは自分たちが擁護されるように、理由も言わずに一方的に殴られたと先生に泣きついた。
おかげで俺は中学では問題児扱いであり、母親は呼び出され、帰宅すれば父親にはこっぴどく叱られた。
警視総監の息子ともあろう者が暴力など恥さらしめ。
父親の口からは決まってその言葉が吐き出された。
理由など父親からすれば関係ないのだ。
父親との関係で溝が深くなったひとつの要因である。
ここでは、父親のことは抜きにして対等に関わりたかった。
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