第一章 鷹山高校

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「亀って家に人上げるの抵抗あるタイプ?」 「いや?全然?」 帰路を自転車で走りながら京介に問いかけられ、俺は首を傾げつつ答える。 「じゃあ俺らが遊びに行っても大丈夫?」 「うん、全然いいよ。ただ俺んち何もないよ?かろうじてテレビがあるぐらいで漫画もゲームもないし。」 「そんなもん俺らがいくらでも持ち込むわ。つかそんなに簡単に許したらたまり場になるぜ?」 「別にいいよ。その方が俺も楽しいし。」 「マジ?泊まりも?」 「いいよ。好きなように来てくれたら。部屋も余ってるし。ただ俺のバイトの日はダメだけど。」 「そこまで図々しくねぇよ。彼女が出来りゃ言えよな。配慮すっから。」 「そんなの全然出来る気配ないから。それに、女の子は連れ込まないから。彼女に私生活を探られるのは好きじゃない。」 「何、訳あり?」 「そういうわけじゃないよ。ただ休まらないから好きじゃないんだ。友達のほうが楽。」 「ふぅん。だって多田。俺らのたまり場決まったぜ。」 「うん、聞いてたよ。でも、もうちょっと危機感持ったほうがいいかもよ。世の中そんなに善人だけじゃないよ。」 「知ってるよ。でも、2人は俺に何かするつもり?」 「するわけねぇだろ。」 「でしょ?そう思ったから俺も許してるんだよ。誰でも彼でもってわけじゃないよ。」 「それならいいんだけど。バイトは何するか決めたの?」 「まだ全然。もうちょっとこの辺の土地覚えてからかな。まだろくに自分の家にすら帰れないし。家の近くまでちゃんと連れてってね。俺帰れないから。」 「分かってるって。」 京介たちには目印になる橋まで連れてきてもらい、今日は解散となった。 2人は家が近所であり、幼馴染なのだそうだ。 一緒に登校するらしいので、時間が合えば明日の朝にでも校門あたりで鉢合わせるだろう。 帰宅すれば、俺は心地よい気だるさに欠伸をしつつ制服を脱いで洗濯かごへと放り込む。 以前ならこのように放り込んでいれば母親が回してくれていた。 今日からは自分でしなければならない。 家の掃除も、洗濯も、家事も全て。 それでも、それよりも今この静かな空間が何よりも嬉しかった。 誰にも干渉されることのない空間。 帰りが遅いだけで(とが)められることも、テストの点数にいちいち難癖をつける人も、所作や言葉遣いにケチをつける人もいない。 今全てが俺の自由な時間だった。
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