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「僕は、僕はあなたをずっと、ずっと、運命だと……」
「俺だって、お前が運命かもしれないと思う時はあった。だけど、出会ったら全く違うことが分かった。お前は俺の運命じゃない」
桐生の言葉が胸に突き刺さる。胸が苦しくて息をするのももどかしい。
「出会えば分かる」
「僕は、分かったんだ。あなたが僕の運命だって、衝撃を受けたんだっ」
言っても桐生は首を横に振る。
高校の入学式に現れた桐生に感じた衝撃。惹かれてやまないその姿、声。僕はずっと桐生を想い、桐生の側にいる努力を続けてきた。
恋を、恋をしていた。
「お前も分かっているだろう。俺を拒絶しているのはお前自身だから」
桐生のフェロモンを感じると吐き気は頭痛がする。それは大分治っていたのに、昨日はそれが再発した。
それは桐生が運命に出会うために僕が邪魔だったからだ。
引きつけあい、惹かれ合う運命。必ず出会う運命。
「だけど、だけど僕を番にしたじゃないか」
ずるずると桐生に追い縋ったまま床に膝をついた。ボロボロと涙が溢れて頬を伝って流れ落ちていく。
「桐生、桐生」
何度も名前を呼ぶ。呼んで追い縋っても桐生は手を差し伸べなかった。
「僕が、僕が信じていたって知ってましたよね」
桐生に好きだと伝えたことはない。だけど、運命の相手は桐生だと思っていることは伝えていた。
僕が、信じていることも。
「どうして、どうして……」
どうして、どうして僕は運命を手に入れることができない。
どうして僕がこんなに虐げられなければならないんだ。
「沢木。番を解消してくれ」
桐生の言葉に立ち上がると僕は思いっきりその頬を平手で叩いた。
それを逃もせず、避けもせず桐生は耐えた。
『ヴゥゥーン、ヴゥゥーン……』
僕のスマホが鳴り出した。
「お前には悪いと思っている。だけど、頼む」
桐生の懇願に納得できずに、もう一度その頬を叩いた。
首を横に振る。
桐生が叩こうと上げた手を握って遮る。
『ヴゥゥーン、ヴゥゥーン……』
「沢木、落ち着いてくれ」
桐生の言っていることは理解している。だけど、納得はできない。
何年も側にいたのに、急に現れた運命の番に全てを奪われる。
僕の想いも、努力も全部。
番という身体の繋がりさえ奪われる。
『ヴゥゥーン、ヴゥゥーン……』
なり続けるスマホ。
「桐生、僕はあなたが好きだ」
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