訪れる

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 いくら調べても相手が見つからない。  桐生は落ち込んでいるし、仕事は立て込んでいる。  日本を離れればあのΩに会う機会も減るだろう。  午後にはアメリカに帰らなければならない。  僕という番がいるから番契約はできなかった。  勝手に番を解除することもしなかった。αからは番を解除することができる。  だけど、桐生は勝手に解除をしなかった。運命の番だと確信した相手に出会ったのに。  そこだけは僕を優先してくれたってことだろう。 「写真の中にはいない」  桐生が移動の車の中でタブレットを使って入手できた写真を確認したが、その中にはいなかった。社内報なのどのスナップ写真も数枚用意はしたがその中にもいない。 「番に……なればよかったんですよ」  僕を解除して番になればよかったのに。 「そんな勝手なことするわけないだろう。お前は俺の番だ」  今はまだ僕が桐生の番だ。 「勝手ですね」  事故だと言ったくせに。  運命の番じゃないと言ったくせに。  意固地になっているのは分かっている。僕に運命の番を探させる酷なことをさせているのに。 「お前には悪いと思っている。もしも見つかってもお前の仕事も将来も保証する。俺が全力でお前を守るし、お前を大切にする」  泣き出してしまいそうだった。 「まるでプロポーズのようですよ」  茶化しても誤魔化しきれない。  自分の心には嘘はつけない。  このまま運命の番が見つからなければ良いのに。 「このまま見つからなければお前は番のままでいい」  言い返す言葉が見つからない。  こんなにも勝手ばかり言う桐生に愛想がつきればいいのに。  希望を、一縷の望みを与えられてしまうから。そして、自分もそれを突き放すことができない。  甘えているのは僕の方だ。 「期限を……期限を決めてください」  最期通告を。じゃないと僕は諦めることができない。  もう探さないという期限。  あなたが、僕だけの物になるという約束の期限。 「分かった。2年でどうだ?」  2年。2年あれば番は見つかるかもしれない。  だけど、日本にいる時間は短い。引き寄せられる運命なら2年あれば十分かもしれない。  今まで出会うことが無かった。だから……。
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