訪れる

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「2年、ですね。2年後の今日に設定しましょう」  桐生の持っていたタブレットを取って予定表に設定した。 「その間に番が見つかれば潔く身を引きます」 「お前の運命の番が見つかった時には俺も身を引く」  私の運命の番。  桐生以外に考えたことなんてなかった。 「僕に運命の番なんているんでしょうか」  桐生は笑ってタブレットを取り上げると、「俺にもいたんだ。お前にも必ず現れる」と言った。 「お互いの番が早く見つかるように協力しよう」  桐生の言葉に、「僕は……」桐生でいいとは言葉を続けられなかった。  引かれ合う運命の番がこのまま逃してくれるはずはない。  一度出会ってしまったのだから。僕は、僕は桐生の番でも、運命ではないのだから。 「番の解消は怖いです」  絆が深ければ深いほどその解消は精神に影響を及ぼす。Ωはそれに発情期が再発して、一生番になることはできない。  僕に運命の番が見つかっても、番になることは叶わない。僕には将来が見えない。  幸福な将来が見えない。  このまま桐生の番でいることができたら、それが幸せかもしれないのに。 「解消しても、お前の身は俺が保証するし、仕事も生活も保証する。約束する」  桐生はじっと見つめる。その瞳に嘘はない。  桐生が嘘をつかないこと、僕に対して真摯でいることはこれまで側にいて知っている。 「約束する。期限は2年だ」 「わかりました。約束します」  2年の間に番が見つかれば僕は身をひく。  身を引いて桐生からは離れる。僕の想いは終わる。  まだ2年ある。2年後、桐生は僕のものになる。  約束だ。
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