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「身分証をお見せください。」
壁の外へとつながる門へ着いた時、門番のような人からそう言われた。先輩はカードのようなものを見せているが私は何も持っていない……
手に汗を握りながら気づかないでくれとながったが、やはりそうもいかない。門番が私を見て訝しむように「身分証は?」と問いかける。すると先輩が助け舟を出すようにこう言う。
「こいつは今から入隊試験をするから身分証はまだない。」
「承知しました。
……ところで入隊試験は本部でやるものでは……?」
「俺が直々にやるから、内容も俺が決める。何か文句あるのか?」
まるで俺様のような発言をしているが、威厳があるだけで先輩が言うとそうは感じない。
「っ、失礼しました。どうぞお通りください。」
そう門番は言うとスイッチのようなものを押し、重そうな金属製の大きな扉が「ゴゴゴッ」と音を立てて開く。
「ここから先はどこからハデスが襲ってくるかわかりません。どうぞお気をつけて。
(試験頑張ってください!)」
最後に笑顔でコソッと言われ、私は小さく会釈したあと先輩は壁の外へ車をすすめた。
車を走らせて5分くらい経っただろうか。ボロボロになったコンクリートの道路を走り、途中で崩壊した街並みを進む。
「ここだ。」
そう言われて車を降りるとそこは大きな交差点のど真ん中で、周りにはヒビだらけのビルが立ち並んでいる。しかしそこにはまだ誰もおらず、ハデスの姿すら見つからない。
「何もない…ですけど。」
「…静かにしてろ。」
目を細めて辺りを見回す先輩は何かを見つけるとすぐさま銃を取り出し、誰もいないボロボロのビルに1発放った。
「カンッ」
と銃弾がコンクリートに当たる音がする。するとすぐに人でないうめき声が聞こえた。
「来るぞ。」
「ドンッ!」
大きな音とともに前方から突風が吹き、咄嗟に腕で顔を隠すとパラパラと小さな瓦礫が体に当たる。腕を恐る恐る下げると目の前にはこの前よりも一回り小さなハデスがいた。
「やはりまだ小さいな。
よし、こいつを倒せ。それが入隊試験だ。」
先輩はそう言うと呑気に歩いて少し離れたところから私を見る。目の前のハデスに足がすくむが、これは私に与えられたチャンス。
ここで絶対にこのハデスを倒して、私の目的を叶えてやる!
私は精一杯教えられた構えで銃を打つ。時折ハデスから攻撃を受けるが何とか周りの瓦礫をうまく使い逃げる。上手くいかないことに腹を立てているのかハデスは隙を見せることが多くなった。
このままいけば倒せるかもしれない。
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