03.入隊試験

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そう思ったのも束の間だった。私はとある異変に気がついた。私が打った銃弾はハデスにダメージを与えるどころか、柔らかい体で威力が吸収されそのままポトリと地面に落ちる。 「……どうして…当たっているのに…」 これじゃあどんなに弾が当たったって目の前のハデスは倒れる気配がしない。むしろ隙を見せているのではなく、私の攻撃など無視しているようだ。ダメージはないが体に小さなものを投げつけられ、怒りでより凶暴になっている気がする。 凶暴になったハデスは周りにある大きな瓦礫を軽々と掴み、私に投げつける。必死に避けてはいるが数が多すぎて体が追いつかない。避けたと思っても目の前にはまたすぐ瓦礫がある。  当たる‼︎ そう思い目を瞑ろうとするが私はあることを思った。 先輩は私に何かを試している。でなければハデスを倒せない銃なんて渡さないはず。きっとこれはハデスを倒すことが合格の条件じゃない。 それにここら辺の瓦礫のコンクリートは結構脆い。さっき小さな瓦礫は蹴飛ばしただけで、ボロボロに崩れるほどに。  それなら… 一か八かで私は飛んでくる瓦礫に銃を構え、そのまま引き金を引いた。すると目の前で瓦礫は砕け散った。 銃を使うことで瓦礫を砕くことができるとわかれば、もう怖いものはない。どんどんと飛んでくる瓦礫を砕き、傷を負わない私にハデスも気がついたようだ。投げるのをやめ今度は口を広げて私の方へ走ってくる。 「バンッ」 銃声とともに走ってきた目の前のハデスは消え去り、足元にこの前の赤いガラス球のようなものが転がる。 「ハデスを倒せないのはお前が持っているのが普通の銃だからだ。分かってはいると思うが、今回の試験は『ハデスを倒す』のではなく『ハデスに向かう姿勢と危機に陥った時に冷静に対処できるのか』を確かめたかった。 最後はお前がケリをつけろ。」 先輩はハデスを殺した銃を私に渡す。私はその銃を受け取り、前回のように震えることもなく赤いガラス球を打ち砕いた。  パリンッ 「よくやった。これから本部に報告しに行くぞ。」 そう言って先輩はさりげなく私の頭にポンと手を置いて車の方に向かった。無表情とは言え綺麗な水色の瞳に見つめられると、不覚にもドキッとしてしまいそうになり私は慌てて目を逸らす。 「どうした…?」 車を走らせる準備をしている先輩は私の様子に気がつくと無神経に尋ねてくる。 先輩は自分の顔の良さに気づいていないのだろうか?こんな世界になる前だったら顔だけで食べていけるほどなのに…… 呆れそうになるが「そう言う人なのだろう」と思い込むことで、さっきの気持ちは心の奥底にしまった。 「いえ、なんでもないです。」 そうして私たちは車で壁の中へと戻り先輩の言う本部へと向かった。とは言っても到着したところにあるのは1つの壊れた廃ビル。到底こんなところに本部があるとは思えなかった。
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