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「………ところで、早速本題だが昨日のお前の『願い』。あれはどう言うことだ。それにどうしてまだ生きている。」
食べ終えると早速尋ねられた。いつか聞かれることはわかっていたが、もうその答えを言う時が来たのか。
「言った通りです。私の願いは『誰かに殺されたい』、ただそれだけ。そして1つ目の「願いの意味」は2つ目の「なぜ生きているか」と言う答えにつながります。
簡単に言うと…私は自分の意思で死ねないんです。」
正確には「死」に直面しているとわかっている状態では死ぬことができない。
そう言うとレオは納得したように、手を口に当て考え始めた。もっと驚かれると思っていたが、どうやらすぐに私の状況を理解したらしい。パルは意味がわかっていないのか首を傾げている。
「…つまり、自分で死ねないから『誰かに殺されたい』と。」
「はい。」
そうだから私は自殺することができない。
それは生まれつきそうだった。自分のミスで怪我をしても、すぐに再生し傷は塞がる。きっと昨夜壁から飛び降りて体はぐちゃぐちゃになっただろう。どんなに原型をとどめていなくても5分ほどあれば大抵の場合再生する。最初は大層みんなに気味悪がられた。
そして次第に私はこの能力を隠すようにした。
だけどこの能力のせいで私はこうして今も生きている。両親がハデスに襲われた時も、私は何もできなかった。
「なぜ死を望む?」
「家族もいないこの世界で私に生きている意味などありませんから。」
本当にその通りだ。家に帰っても待っているのは暗闇と静寂だけ。もう私には温かな家族の影すらないのだ。
「……やはり欲しいな。」
レオは小さくつぶやいて言った。
「改めて言う。ヴィーナスに入らないか。」
さっきまでだったらまだ断っていただろう。だけど、今の私には死ぬことと同じくらい大きなある目的ができた。そして私が飛び降りた時も一ミリも表情を変えないことから確信した。
この人はいつか私を殺してくれる、と。
「私の願いを叶えてくれるなら。」
そうして私は伸ばされた手を握りヴィーナスに入ることになった。
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