01.ヴィーナス

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とは言っても、どうやら入隊試験というものを受けなければいけないらしい。 「ヴィーナスは誰でも入れるわけじゃない。誰かを失い、ハデスに対して強い悲しみや憎しみを抱えているものしか選ばれない。 お前は誰かを失った目をしている。別に誰を失ったのかは聞かないが、殺せる時に迷いが生まれれば、こちらが殺されることを覚えておけ。」 そう説明された時だった。突然パルがけたたましい声を上げた。 「緊急招集‼︎緊急招集‼︎ 市街地3丁目にてハデス発生!被害者2名、その他負傷者不明。直ちに現場へ直行せよ。 繰り返す、直ちに市街地3丁目のハデスと被害者2名を抹殺せよ。」 先ほどまでの可愛らしい声とは打って変わって、機械のような声が流れた。 「チッ、またか。」 レオは小さく舌打ちをして何やら準備を始めた。白いワイシャツの上にきちっとした黒いベストを着て、ガンホルダーを装着する。近くの引き出しを開け、何やら金庫のようなものから黒いハンドガンを取り出して出口へと向かう。 私は黙って手早く準備をしているその光景を見ていた。するとレオは振り返って私を見る。 「入隊試験だ。来い。」 そう言われると、私はガタンと音を立てて立ち上がり、レオの開ける扉へと向かう。その日が私が初めて誰かを殺すことの恐怖を知った日だった。
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