02.恐怖

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強く目を閉じ引き金を引こうとすると、レオは私の握っていた銃を取り上げ片手で親子に向かって2発だけ撃った。 親子はさっきのハデスのようには消えず、黒い物体に包まれたまま赤黒い血を流している。 「…行くぞ。」  ダメだった。私は失格だ。 そう落胆できたらどんなによかっただろう。そんなことよりも、あんな小さな女の子がこんな最後を迎えるなんて、と考えると胸が苦しくなる。  どうして、これからまだ長い人生があるはずだった子供が死ななければならないのか。どうして、こんな世界になってしまったんだろうか。 そればっかり考えてしまう。自分の不甲斐なさと覚悟が足りていなかったことをひどく悔やんだ。レオの方を見ると、なんとも思わないかのように顔についた返り血を拭き、その場を立ち去ろうとする。  せっかく掴んだ手がかりだったのに、ここで終わってしまう…… 段々と後悔が胸の奥から込み上げてくる。するとレオは止まって私に背を向けたまま言った。 「…まだ銃の使い方を教えてなかった。今のは単なる見学だと思え。」 振り向くともうレオは歩み始めていた。私はただ彼を見つめるだけで、どんどんと距離は離れていく。それに気がついたのか、レオは振り返って私を見る。 「…来ないのか?」 そう言って手を差し出すその顔は無表情なようであったが、耳が少し赤くなっていた。……ような気がする。いや、今思うとそうでもなかった気がする。 私は2人の前にしゃがみ込み目瞑って手を合わせた後、 「行きます」 そう返事をしてレオの方へ駆け寄り、隣を並んで歩いてアパートへと戻った。 「おかえり〜」 部屋の扉を開けるとパルが出迎えてくれた。さっきのけたたましい機械音ではなく、可愛い声で。 「た、ただいま…」 そう言うのは何年ぶりだろうか。この5年間、兄は家を空けがちで今までは誰もいない暗くて小さな箱のような家に帰ることに慣れていたからか、今はこの光景がとてつもなく温かく見えた。 「俺は本部に報告をしてくる。お前は手でも洗って待ってろ。」 レオは私の後ろでそういうとバタンと扉を閉め、すぐに出て行ってしまった。 「まったく…主人はもう少し優しくなればいいのに。 さぁ、リネちゃんこっちに来るでちゅ。」 そうして案内された先で手を洗い鏡に写る自分を見る。肩につくくらいの薄いピンクシルバーの髪に赤茶色の瞳、それらは全て兄と同じくお父さんとお母さんから受け継いだものだ。  私たち家族は近所でも有名な仲良し家族だった。お父さんもお母さんも優しくて、2つ上の兄はいつも私を可愛がってくれていた。たとえハデスのせいで両親が死んでしまっても、兄さえいればまだ良かった。 それなのに兄とは2年前、突如連絡が取れなくなり、私はいつの間にか兄と同じ17歳になっている。兄は今の私をみてどう思うだろう。
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