1136人が本棚に入れています
本棚に追加
「トーストでいいか?」
「はい。あ、私サラダ作りますね」
テキパキと用意し、二人で朝食を囲む。こんな穏やかな時間を過ごしていると、もうすぐ離婚する二人とは思えない。
大知は、いつ出すつもりなのだろう。いろいろと手続きもあるし、一応聞いておいた方がいいだろう。
「あの、大知さ……」
顔を上げ、切り出したところで、大知の仕事用の携帯が鳴った。
「悪い。病院からだ」
杏に断りを入れ、素早く電話を取る。その顔は既に医師の顔で、さっきまで杏に意地悪を言って困らせていた男と同一に見えない。
「あぁ、そうか。で、家族には?」
大知は相槌を打つたび、深刻そうな表情になっていく。
「わかった。すぐに向かう」
一分ほどで電話を終えると、慌てた様子で立ち上がった。
「悪い。受け持ちの患者が急変した。すぐ出ないといけなくなった」
「そうなんですね。わかりました」
身支度もそこそこに、大知はかけてあったジャケットを急いで羽織ると、玄関へと向かう。その後姿はもはや戦場に向かう戦士のよう。
最初のコメントを投稿しよう!