第一章 離縁願います

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「また気持ちよくなったのか? こんなに濡らして」  真っ赤になった杏に視線を落としたまま、意地悪な笑みを向ける。しかもその台詞は、杏を困らせて楽しんでいるとしか言いようがない。大知の意外な一面だ。 「やっ、待って……これ以上は……」 「はしたなくなんかないよ。杏の感じてる顔、すごくそそられた。もっとみせて」 「ああっ……ンッ」  その言葉に後、覚えたての体は、あっさりと深い快楽へと落ちてしまった。頭は真っ白になり、自分の体なのに、自分のものではないかのような感覚に陥った。  平日の早朝から、こんな濃密な時間を過ごすことになるなんて、想像もしなかった。  次に目が覚めた時には、コーヒーのいい香りが部屋に漂っていた。  気怠い体を起こし、キッチンへ行くと、大知が朝食を用意してくれていた。時刻は七時半。どうやら二度寝してしまったらしい。 「すみません、大知さん。手伝います」 「もっとゆっくりしてればいいのに」 「いえ。大丈夫です」  朝からあんなことをしたというのに、大知はあっさりとしたものだ。これが経験の差というやつなのだろう。
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