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「ねえ、雪成。あたしの小説ノート、まだ持ってる?」
「あ。すまん」
雪成はカバンからあたしの水色のノートを取りだす。
「くまの話、最後にもう一章書き足したくなったから、返してもらえる?」
すると、雪成は思いもよらないことを言った。
「そこ、おれが書いてもいいか?」
「ええ!?」
「言ったろ、希望のない結末だって。おれなら、この先に希望を書くことができる」
「あたしが書いてるんだよ!? 著作権の侵害! そう、著作権の侵害って、こういうことだよね?」
「全面改稿して合作にしないか? ってことで、これは、おれが頂く」
雪成がノートを奪い去るように、ゆるやかなスピードで走り出す。やっぱりほんの少し、右足をかばいながら。
「もー!」
あたしはマスクごしにさけんだ。
「ぜったい追いついてやるんだから!」
今日の小説会議もなかなか終わりそうにないな。
あたしはそう思いながら、雪成のあとを、追いかけた。
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