はじまり

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はじまり

 冬の間は常に危険と隣り合わせだ。はやく春が来てくれないものか。隙間風だらけの家では夜も安心して寝ることができない。だから朝が来ると必ず感謝することを欠かさないようにしている。晴れでも雨でも雪が降っていたって空が明るくなっているだけで喜びを得ることができる。  朝の準備は素早く済ませなければならない。バケツに薄く張った氷を割って心の準備を決めてから顔を洗い、毛先が横に広がった歯ブラシに水を含ませ口もきれいになったら朝食を用意する。今朝の朝食は昨日安売りになっていた黒いバナナと固くまだ青さ残るオレンジ。朝食べると活力が出てくる、これらにもしっかり挨拶を済ませエネルギーをもらう。ここまでくれば朝の準備は終わり仕事に向かはなければならない。  僕は仕事が好き。仕事の内容やそこにかかわる人たちではなく(もちろんそれらも嫌いではない)働くという行為が好きだ。随分といい性格をしているなと我ながら思う、神様に感謝しなくちゃいけない。そろそろ約束の時間だ。軽い鞄をを下げ急ぎ足で現場に向かった。  
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