はじまり

10/30
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
 ポケットを確かめながら図書館を後にし、北西の町へ向かう。次の目的は寝具の新調、景色の流れが速くなっている。図書館から北西の町へはすぐに着きそうだ。    この町は東西南北をつなぐ二つの大きな道があり、それに伴い四つの地区がある。北東地区が最も裕福な人たちが住んでいる地区その次に北西、南東、最後に南西と徐々に人々も貧しくなる。当然建っているものや、街並み、治安なんかもいいものではない。南西の人々はすさまじい。僕もここではほとんど仕事をしない、そもそも報酬を支払える人間がいないから当然のことだけど。皆あそこに行かないように生きている。また下の住民は上の地区には寄り付かない、自分に見合った場所で生きている。  道に沿って建てられている家のほとんどが何かしらの店。ここ北西地区は商業地区になっている。食品や衣類、仕事道具など生活用品の全てはここで手に入る。  目的の寝具は通りから少し入ったリドカさんという女性主人が経営している店、ここでは服から寝具まであらゆるものが手に入る、リドカさんが言うには布に関するものなら何でもとりそろえているらしい。たしかにこの町で一番の服屋だと思う。  店の前まで行くと相変わらず大量の布が積み重なっていた。リドカさんは店の中央で服に囲まれながら縫物に集中していてこちらには気づいていない。近づいて声をかけるか迷ったが気づいてもらえるまで静かに待つことにした。仕事中の彼女はとても怖い。  
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!