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リドカさんはさっきまで作業していた道具たちを店の奥にしまって戻ってきた。見たことない形をしていた、新作を作っていたのかもしれない。
「さ、今日は何をお探しで?」
スイッチが入ったみたいだ、声が商売人のものに変わった。
「いい寝具を探しに来ました。最近寒くって。」
目的のものを伝える。
「布団か~、いまほとんど売れてしもてあんまないねんなー。奥見に行ってくるからちょっと待っといて。」
そう言って店の奥は消えていった。僕はまたたくさん積まれた布たち眺める。
再度数十分待ちリドカさんが人ひとり包めるくらいの大きさがある柔らかそうな物を抱えて戻ってきた。
「なんですかこれ?」
「これな、この前作ったやつやねんけど生地の中にな、カモの羽を詰めた奴やねん。猟師の人らが羽捨てよんのみて思いついたんや賢いやろ~。これ中に入れたらごっつい温いんとちゃうんかおもて。カモらも羽まできれいに使ってもらわれたほうが嬉しいやろ。ほんで試しに作ってみたらめちゃめちゃあったかかったわ~。温いだけちゃうでこれなめちゃ軽いねんほんま雲もっとんのか思うくらい。」
怒涛に説明が降ってきた。彼女は話すとき息をしているのだろうか?
「すごいんですね、じゃあさっきのはそれを作ってたんですね!」
「そうやねん、結構時間かかるんやけどこれは絶対ええ商品やと思うねん。ほんでな、ここの生地にも…。」
彼女の興奮が落ち着くまで話を聞き続けるしかないな。太陽は変わらず上にあるが暖かさは感じない、風は少し強くなってきた。
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