はじまり

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 扉の前で迷う。図書館の中を自由に動くのは許されて居ない。このまま勝ってに入ってペンを借りて元の位置に戻しておけば気づかれないとは思うがそういうことは出来るだけ避けたい。職業柄信用に関わることはしないよう癖付いてしまっている。このまま扉に前にいても何も変わらない、迷ったがペンを借りることにした、後で先生に説明することを心に決めて。  扉をゆっくり開けると落ち着いた蝋燭の匂いがした。想像していたような窓はなく灯りは蝋燭からしかない。部屋は十人ほどが寝られるくらいで想像していたようなものはなく、拍子抜けだ。あるのは一人用の机と椅子が一つずつどちらの木製。壁も天井までも木で作られている。町で見るものよりもかなり大きな蝋燭しかない。目的のペンはどこにあるのだろうか。部屋へと足を踏み出すと鼓動が早くなった。緊張しているのだろうか?何もない部屋で?後ろめたい気持ちがあるからか?  額から汗が流れてくる、机にはやはり蝋燭しかなく引き出しがあるわけでもない、ペンは見つかりそうもなかった。ここにあるのはただ懸命に燃え続ける蝋燭だけだ。    火を見つめると何故だか目が離せなくり、この部屋に空気はあるのだろうか?なんてバカだと思うがそんな風に考えてしまう。揺れることすら感じられずただ上に向かって伸びる火。    「何をしているんだ」  突然の声に肩が上がる。影は後ろに向いているが振り向けばそこに先生がいるのだろう。更に汗が吹き出す。  「すみません、説明させてください。」  意識をこちらに戻し先生の方向く。想像通りの姿で先生はこちらを見ていた。  
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