はじまり

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 先生は荷物を置いておくことをあっさり許してくれて。僕はこうして手ぶらで町に戻ることができた。ポケットにある石しか持ち物はない。  出てくる時に先生が一つ忠告をくれた。   「ひとつ助言だがそのしるしは誰にも見られないようしたほうがいい。」    どういうことだろうか?確かに見たことない素材ではあるが、手に入れたいと思うものでもない。少なくともこの町の人間は必要としていない。先生の話ではこれが何かの役に立つわけでもなさそうだ。まあ、言われたからには見せびらかすようなことはせず大切に持っておこうとは思うが。  日は少し傾き昼は我慢して夜おいしいものを食べようと決め、それならばセタさんのところでいい肉をもらおうと歩いている。さっきのことがあったとはいえ気持ちはまだまだ上向きだ。 足も軽く感じられる。  セタさん変わらず店でお客さんの相手をしていた。  「セタさんお疲れ様です。まだいいの残ってます?」  客が離れるタイミングで声をかけた。  「おう、キヨか!いいものなー。今ほとんど出てしまったからなー。」  残念だが仕方がない、いいものは当然早く無くなるのだから。  「そうですか!もうちょっと早くこれば良かった。」  「お前さえ良ければだがいいものがある、これなんだが…」   そう言って後ろから大きな肉の塊が出てきた。  「朝話してた鹿の肉なんだが今日はまだ残っててな、かなり高いがどうだ?味は保証するぞ!」  出てきた肉は朝見たものよりも更に大きく色は深く素晴らしく上質な肉だとわかった。  「こんないいやつ残ってたんですか⁉︎」  「いいだろ!実はあまりにも美味そうだったから自分で食おうと思って隠してたんだよ。」  笑いながら答え肉をまた後ろに戻した。  「お前には世話になってるから半分だったらやるよ!これでどうだ?」  手を四の形にして出してきた。  迷う。確かにこんな肉なかなか食べる機会はないだろう。しかし高い。  「そうですねー、もう少し負けてくれません?あと五百くらい。」  「しゃーねーなー。それでいいよ。だが次の仕事は頑張ってもらうぞ!」  成立だ。手差し出す。今日は稀に見るご馳走になりそうだ。
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