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昼食はおにぎりに浅く浸かった漬物が添えれていた、米を食べれる機会ここでしかない。この仕事の得している一点だ。
「キヨ、昨日はどんな仕事をしてたの?」
奥さんがお茶を手渡しながら尋ねてきた。食事中の会話がジュンさんから生まれることはない。普段この二人がどんなことをしゃべっているのかこんどこっそり聞いてみようかな、もちろん奥さんに。
「昨日はセタさんと一日山にいました。」
「なにか獲れたの?」
「ぜんぜんでした。セタさんも怒っていましたよ、寒い中ただ歩かされただけだって。」
「収穫がなかったらそりゃ怒るだろう。ましてや山に入れる猟師は一日一組だけなんて言いだされたら。」ジュンさんが言った。
この冬から新しい法律ができ山に入れる猟師は一日一組までとなった。この辺りは猟師を仕事にしている人が多く今までは自分の好きなタイミングで猟に出られたが、今は自分の番が来るまで待たなければならない。ジュンさんは知らなかったが入ってもいい山も決まっていてこのルールがかなりキツイらしい。
「国もなんでこんなもん作ったのか分らんな」
当然の言い分だ、これのせいで猟師をやめる人も多くなるだろう。
午後はずっと出荷作業だった奥さんも加わって比較的早く終わったと思う。太陽はもう沈んでしまっていた。
「これで終わりだ、手洗ってこい。」
「ごくろさま。野菜すこしだけど持って帰るでしょ。そっちにおいてるかね。」
やった、今日はもらえる日だ。
「いつもありがとうございます。すぐもどってきます!」
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