はじまり

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 ジュンさんの仕事の次の日は休みと決めている。今日は頂いた野菜で食事を済ませ早めに休もう。明日は一日自分のために時間を使うつもりだ。簡単なスープを多めに作り少し食べる。明日の分も残しておかないと。  固く絞った布で全身の汗と汚れを落とす。朝と同様に歯を磨いて床についた。相変わらず薄く固い布団では寒さを和らげることしかできない。明日寝具を買おうかそれとも枕というものを買ってみようか?臨時の収入のおかげで楽しく眠りにつけそうだ。明日のために自分の意識がなくなるのを待った。    朝はいつもと同じ。感謝を忘れずに朝の準備を終わらせる、寒さは昨日と変わりなかった。    今日やることは三つ。食料を買うこと、新しい寝具を探すこと、図書館に行くこと。休日の一日は短いから効率よくいこう。  自宅から町の中心部までは歩いて二十分ほどで着く。まずは図書館で先月の続きを読むことにする、中央通りが一番の近道だ。  中央通りは名前のまま町の中心を走っている道で大概の用事はこの通りで解決する。  「キヨおはよう。今日は休みか?」  通り沿いにある肉屋の前でセタさんに声をかけられた。彼は猟師と肉屋も経営している。自分で店を持てば肉を卸さなくてよくなるから儲けれるらしい。そもそも自分の店を持てる人は限られてるから彼は選ばれた人間なだと思う。  「おはようございます。休みです、どうしてわかるんですか?」  「お前顔に出てるんだよ。わかりやすいな!」  朝から元気な人だな。彼が静かな時は猟の時しか見たことない。彼とおなじように笑顔で答える。  「顔に出やすいのはセタさんのほうですよ、昨日調子よかったんですね?」  「分るか?みてくれよ、これ!」  そこには赤く光った肉が部位ごとに並べられ見ただけで上質なものだと分かった。  「いいのが獲れましたね!何の肉ですか?」  「このでっかいのがヘラジカでそこのぷりぷりとしたうまそうなのがうさぎだ、こいつもうさぎのなかだったら大物だぞ!どうだ買ってくか?やすくしておくぞ。」  「いいですね。でも、今から用事があるんでやめときます。」  「そうか、じゃあまたにするか。」  「はい、今度仕事の時におまけしてください。」  「ハハハ、じゃあ前の倍は頑張ってもらわないと。」 セタさんに別れをつげて図書館に向かった。
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