はじまり

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 宿題は本を一冊渡されそれについて感想を書くというもの、歴史の本だった。この世界がどんなふうに作られ今のようになったかが書かれていた。どうやらこの世界は何万年も前に神様が作ったそうだ、僕の解釈だとそのように書かれていた。初めに触れる本の中ではかなり定番のものらしいが…。     先生が出てきたのは太陽がちょうど真上にきたときだ。ここにある本はかってに読むことが許されておらずただ静かにその時が来るのを待った。  ずいぶん時間がかかったな、確かに紙にはかなり細かな字で書きはしたが一枚しかない。そんなに汚かっただろうか?この前字を見てもらったときは先生も普通に読んでいたのに、ただ緊張だけが高まる時間だった。  「見せてもらった。結果からだが合格だ。」  合格?まだ何もしていない。先生は今日僕の読書感想文をよんだけだ。  「あの…、試験というのはこの宿題だったのでしょうか?」  「そういうことだ。おめでとう。かなり良くかけていたよ。」  「ありがとうございます。」  話がうまく入ってこない、さっきまでどんな試験が待っているだとか。宿題はちゃんと書けていたのかとか。不安との戦いばかりしていたのに急に時間が飛ばされたみたいな感覚、気持ちを追いつかせないと。  「これからはここにある書物を読みながら更に知識をつけて行ってくれ。それとこれは合格のしるしだ。」  そう言ってポケットから模様の彫られた石を取り出した。石のように見えるがそれよりは光沢があり持ってみると恐ろしく軽く冷たかった。  「これは様々なことを与えてくれる。ほかの町に行くことができるようになる、ここにある本も好きなように読むことができる。お前が望むのならここの管理者のなることもできる、ほかにもまだまだあるが、お前にとってだと町の北東でも……。」     先生の言葉が小さく聞こえる。意識は手になかにある不思議な模様に囚われている。伝わる温度は徐々にぬるくなってきているのに。            
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