1 京川聖の章

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【 MLB大改革 】 『1番キャッチャー、京川 背番号51』 どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ ! ! きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ ! ! ヤバい盛り上がり …… えっ ? マウンドの怪物がおれをガン見していた。 この雰囲気が気に食わない ? いや、おれのせいじゃないし …… なんとも迫力の面構え ……確かタメだよな ブルーベイズの開幕投手。 サンデー・ガルシア、23歳。 ホントにおれと同じ歳 ……なのかな ? 195センチ、105キロの左腕。 最速163キロを誇るベネズエラの怪物。 昨シーズンはナショナルズで3勝15ホールド。 こんなバリバリのトッププロスペクト(若手超有望株)がNPBに来るなんて、今までなら絶対にない事だった。 しかしこのオフ … こんなケースも決して珍しくない。 今シーズンから、メジャーバリバリの働き盛りが日本、韓国、台湾、オーストラリア、オランダ、イタリア、イスラエル等の強豪クラブチームに続々と移籍している。 特にオランダでは凄まじいチームが出来上がっているという噂もある。 当然といえば当然の流れかも知れない。 MLB大改革。 今シーズンから、アジアのクラブチャンピオンがナ・リーグの、ヨーロッパのクラブチャンピオンがア・リーグのディビジョンシリーズ枠に入り、ワールドチャンピオンを目指せる事になった。 そうなるとメジャーの強豪や名門でスタメン入りを果たすより、アジアやヨーロッパの強豪チームに入って、主力としてチャンピオンを狙う方がはるかにハードルは低いだろう。 アジアやヨーロッパのチャンピオンになればワールドシリーズへの道が拓ける。 野球をやっていれば、誰だってワールドシリーズを夢見るだろう。 そこで活躍すれば、一躍スーパースターの仲間入り。同時に億万長者への道が拓けるのだ。 【1回裏】 いきなり160キロ。 間髪入れずに161キロ。 ・・・はえぇー もう追い込まれた。 開幕戦からこんな球 ……とても目がついていかない。 3球目。 ・・・なんだ ? 高めのスローボールがアウトコースに逃げながら …… 落ちた。 「ストライクスリーッ !」 111キロのチェンジアップ ? カットボール ? あちゃー ……いきなり見逃し三振。 ちょっと驚くほどの好投手。 続く水野さんが161キロの初球を打ってセカンドゴロ。 そして …… 大沢さんにはチェンジアップ三連発。 3つの豪快なスイングでスタンドを沸かせたが ……あえなく三振。 ガルシアは日本の初マウンドを僅か7球で終わらせた。 ・・・こりゃホンモノの怪物だ まあ、じっくり攻略するしかない。 そのうち誰かが何とかするだろう。 今年、ウチのラインナップにはそう思わせる不思議なムードが漂っていた。 しろくま打線はオープン戦から当たりがイマイチだった。 それでもオープン戦は全体3位の成績。 投打のバランスは、日本一になった去年より明らかに今年の方がいい。 まず、リーグが今年からDH制を導入した。これが大きい。 大沢さんがDHに入って、ダグアウトにでんと構えている。それだけでまったく違うチームになっちゃう。その影響なのかベテランがみんな明るい表情 ……去年とは大違い。 そして、中堅、若手はのびのびとチャレンジが出来る雰囲気があった。 打線はイマイチでも、そのうち誰かが何とかするだろうと思える緩いムード。 不真面目なわけでも、緊張感がないわけでもないけど緩いムード。 で、本当にそのうち誰かが突破口を切り拓く。それがいつの間にか自分だったりする。 投手陣は “ そのうち誰かが ” を信じて踏ん張れるだけのタレントが揃っていた。 やはり、しろくまはピッチャーの安定感が抜きん出ている。 守り勝つ野球は健在だ。 バッティングには必ず好不調の波がある。 時にはスタメンの大半がスランプの時だってある。 それでも今年のしろくま打線は、9イニングで何とか3点以上をもぎ取る野球が出来ている。 先発ピッチャーがクオリティスタート(6イニング3失点)、セットアッパーが7回8回を無失点で凌いでクローザーに繋ぐ。 このカタチは作れている。 “ 球団アドバイザー ” がワールドシリーズまでの道筋を考えてくれる。 おれたちはただ必死にベースボールを楽しめばいい。 さあ、怪物に負けないように、トーヤさんをリードしなきゃ。
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