序章  杉村裕海

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序章  杉村裕海

“ 生きる ” それが自然なことなのか、不自然なことなのか …… 今もわからない。 以前は機械に生かしてもらうことは不自然なことだと思っていた。 愛する人たちの負担になり続ける存在なんて、耐えられないと思っていた。 悪あがきせず、運命は静かに受け入れるべきだと決めていた。 今は …… よくわからない。 ただ、あのとき …… すべての絵が美しかった。 やっ ! と声を起てて豪快に踏み込む伊勢谷 167キロをぶっ叩いた秋時のフルスイング 光線のような白球 鴻野、京川、キャプテンが一斉にダイアモンドを疾走した 躍動する繁宮、マルチネス、蒼野、国分、加治川の決死のディフェンス ホームベースのクロスプレー 右手を大きく広げた審判 大きく揺れるスタンド 三塁ベース上でボクに向かって突き上げられた秋時の拳 スタンドから秋時に向かって突き出された何千何万の拳 跳び上がった元気が見せた、渾身のガッツポーズ 久しぶりに見た、実咲のくちゃくちゃの笑顔 ガッチリと握手を交わす秋庭社長と久住GM グランドとスタンドで拳を重ね合う秋時と朔 それを見て、思わず背を向けた菜都 あのほんの短いひととき …… かけがえのない絵の一枚一枚が、次から次にボクの胸に飛び込んで来た。 あのとき …… ボクは生きることを決めた。
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