44人が本棚に入れています
本棚に追加
序章 杉村裕海
“ 生きる ”
それが自然なことなのか、不自然なことなのか ……
今もわからない。
以前は機械に生かしてもらうことは不自然なことだと思っていた。
愛する人たちの負担になり続ける存在なんて、耐えられないと思っていた。
悪あがきせず、運命は静かに受け入れるべきだと決めていた。
今は ……
よくわからない。
ただ、あのとき ……
すべての絵が美しかった。
やっ ! と声を起てて豪快に踏み込む伊勢谷
167キロをぶっ叩いた秋時のフルスイング
光線のような白球
鴻野、京川、キャプテンが一斉にダイアモンドを疾走した
躍動する繁宮、マルチネス、蒼野、国分、加治川の決死のディフェンス
ホームベースのクロスプレー
右手を大きく広げた審判
大きく揺れるスタンド
三塁ベース上でボクに向かって突き上げられた秋時の拳
スタンドから秋時に向かって突き出された何千何万の拳
跳び上がった元気が見せた、渾身のガッツポーズ
久しぶりに見た、実咲のくちゃくちゃの笑顔
ガッチリと握手を交わす秋庭社長と久住GM
グランドとスタンドで拳を重ね合う秋時と朔
それを見て、思わず背を向けた菜都
あのほんの短いひととき ……
かけがえのない絵の一枚一枚が、次から次にボクの胸に飛び込んで来た。
あのとき ……
ボクは生きることを決めた。
最初のコメントを投稿しよう!