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変身
「なあおい、そこの犬っころ」
「…私ですか?」
「お前以外に誰がいる」
「…わかりました。さあ、焼くなり煮るなり、好きにしてください。もう覚悟はできています。私には、下ろす荷物もありませんから。さあ、どうぞ」
「…?俺はまだ何も言っちゃいないが。そういう事なら話は早い。いいか、お前は五分後、殺処分される。これは紛れもない事実だ。しかし、お前の本当の寿命はあと一年もある。殺されなければ、まだお前の心臓は仕事ができるんだ。わかるな?」
「それは、まあ、わかりますけど。どうせ殺されるならどうでもいいじゃないですか」
「だからだ、お前を助けてやる。ここから出してやる」
「…それは、私を飼ってくれるということですか。なんて良い人」
「違う。お前は飼わない。それに、俺は良い人じゃない。俺の種族は悪魔だ。異世界から来た。お前をここから出してやる代わりに、お前の寿命を半分くれ。それで交渉成立だ。」
「………」
「…何だ、不満か?」
「…あの」
「何だ」
「悪魔さんなら、何でもできるんですか」
「寿命の力があれば、な」
「それなら、私を、人間にして出してくれませんか。ずっと憧れていたんです」
「…できないことはない。だが、その望みを叶えるなら、お前の寿命をもっと貰わなければいけなくなる。良いのか」
「どうぞ、好きなだけもらってください。たとえ一日しか生きられなかったとしても、私、あなたを恨みません。契約、です」
「……」
「やっぱり、ダメですか?」
「お前な、契約を指切りげんまんのノリで言うな。…だが、わかった。それで契約成立だ」
「あ、ありがとうございます!この御恩は一生忘れません」
「お前も、バカな奴だな。……俺も大概かもしれないがな」
「それって、どういう…」
「うるさい。もう時間がないんだ。早速始めるぞ。目ぇ閉じろ」
「は、はいっ…!」
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