1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

わたしたち家族は良質な家庭を築けていた。そう思っていた。 10歳になる頃だろうか、異変に気が付いたのは。 周りはガラケーやスマホを持ち、わたしには何の端末も与えられていなかった。母と父はよく喧嘩をしていた。父は常に酒を煽るように飲み、母はヒステリックな声を上げていた。わたしは、わたしはひたすらに勉学に励まされていた。中学入試対策の問題集を大量に与えられ、理解できないところがあると母を頼り、そして罵倒されていた。ひたすらに勉学に励んでいたのは同級生へ対する負けず嫌いが高じたせいか、それとも母へ認められたかったからなのか。 問題が解けない自分へ苛立ち、壁へ頭を強打する癖がついた。幾度も鈍い音が鳴り響く中、父は母へ「酒を」「夕飯はまだか」とどなりつけていた。 そのうちに自傷癖は加速し、その辺にあったハサミで腕を切りつけ、指を噛み、腕を血が出るまで噛んだ。 なんの取り柄もない、母からさえも認めて貰えない自分が大嫌いになった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!