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「ふたりだけのお葬式をはじめようか、姉さん」
土葬がはじまるまでは、このあたりではずっと月葬だったという。いまではもう月葬を望むひとはめったにいない。みんな故人の骨やら墓やらを遺したがるから。
月葬はなにも遺さない葬式だ。だから廃れた。
けれどもわたしの祖母がこの月葬を希望したから、一度だけみたことがあるのだ。どうすればいいのかも、そのときにちゃんと調べた。
姉の葬式がはじまって、わたしが夜伽をするといった。夜伽とはいわゆる、寝ずに故人の側につき添うことだ。寝ずの番ともいう。みんな疲れていたし、わたしが姉を慕っていたことは知っていたので易く承諾してくれた。みなが寝静まったのを確かめてから、わたしは姉の死体を持ちだした。
これまで悪いことなんかしたことのなかったわたしは、背徳感にぎゅっと胸が縮んだ。フランス映画の禁じられた遊びは埋葬ごっこだった。あのオルゴールの旋律が頭のなかに溢れた。けれども背筋が痺れるような快感もあった。ずっと誰かに決められて、そのとおりにしてきた。
だけれどこれは、わたしが決めたのだ。
「ね、ふたりだけのお葬式をはじめようか、姉さん」
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