第二章・ー気付けぬ罪に、罰をー

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 その場にいた全員が、恐ろしさに身震いする。  これは到底、人間業で出来る事ではない。  だがと、シェイカーは改めてトウジを見る。  トウジはまだ何もしてはいない。本当にいつもと変わらない、()()()のままなのだ。  無論の事、創世の民としての能力すら、いまだ使う気配すらない。 「あ、あの……。さすがにヤバくないですか? トウジさん、全力で兄貴の事、()()にかかってますよね」  不意に、震える小声で話しかけてきたのは、ディアスブレイドであった。  どう答えたものかと悩んでいると、ディアスブレイドが再び口をひらく。 「今のトウジさんに闘って勝つのは無理でも、何とか説得して、怒りを鎮めてもらうとか」 「う、うーん……。やっぱりそれが一番の理想だよね」  トウジの獲物は、ただのダガーだ。  一見して接近戦に長けている武器で、まさかあんな力業の、しかも威力も重さも半端ない遠距離攻撃が可能だとは、頭の片隅にすらなかった大誤算なのである。  出来ればエルファリスの力を借りる事はしたくない。  だが、ここでの実力者と言えばエルファリス、アンダーテイカー、シェイカー、並びにディアスブレイド、レイカ、そしてイースタン親子。といった感じだろう。  その、アンダーテイカーが、手も足も出せずに、防戦すら叶わずやられっ放しなのだから、希望はエルファリスに託さなければ、とは思う。  ……だが、創世の民は場合によっては、四大霊鬼が持つ実力をも凌ぐ能力の持ち主だという。  つまり、本当の意味でトウジが本気を出せば、シュバリエですら勝つのが怪しい雲行きになるくらいの、化け物級の人間だと言えた。  最早道場内に満ちるのは絶望。  この二文字が相応しいと、シェイカーは長いため息を吐くのだったーー。
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